迷盤レビュー Chelmico

部屋を明るくして離れてみてね



 概要:迷盤CD「Chelmico」の紹介レビュー
 


 ポップ寄りのラップが聴きやすいラップアーティストのアルバム第一号。アーティストCD「Chelmico」を紹介してみた。


▼概要


 Chelmico(チェルミコ)は2014年に結成されたMC RACHEL(レイチェル)とMC MAMIKO(マミコ)という女性二人組によるユニットで、ラップを主なジャンルとしているそうです。

 そんなChelmicoのファーストアルバムは「chelmico」なのですが、2016年リリースのファーストアルバムとなっています。翌年にはミニアルバムを、2018年にはメジャーより初アルバムをリリースしていて、順調に伸長している様を窺えますね。

 ちなみに、MC RACHELは渡賀レイチェルで、MC MAMIKOは鈴木真海子という方なのだそうです。レイチェルが本当にレイチェルであるあたり、何だか良いですよね。
 
 また、人や世代によっては「ラップ」というと退廃的イメージを持ち、あまり良俗のイメージを持たない方も決して少なくはないと思います。そのイメージも決して間違ったものとは思いませんが、Chelmicoは確かに王道のラップアーティストらしい退廃的な印象を含みながらも、かなりポップで明るい普通の女子といった感じなのです。

 カフェの女子トークや恋バナが、そのままアートやアーティストとして体現されたような、そんな感じなのです。本アルバムは曲調も本格的なラップというよりは比較的ポップソングに近い印象が強いものが多く、それでいて近年のポップソングに散見する一部分だけラップという中途半端も無くと、ラップが好きな方も関心の無い方も楽しく聴けることが特徴と言えるでしょう。


▼収録内容




【Disc:01】
_01.Oh, Baby!
_02.Give Me Love
_03.ママレードボーイ
_04.Night Camel Feat. FBI
_05.3rd Hotel
_06.ラビリンス '97
_07.Honeymoon Feat. Jinmenusagi
_08.まぁいっか
_09.Summer Holiday
_10.Love Is Over
★お気に入りナンバー「Love Is Over」(外部リンク参照:youtube


▼語ってみる




 私は女子トークや恋バナには無縁ですし、特に興味もありませんけれどね。それでもchelmicoというCDは発売から間もなくより、よく聴いているアルバムです。

 何と言うのか、本作は「脱力系」という表現が似合う内容なのですが、包括的に楽曲が良いのですよね。とっても個性的で癖になる楽曲ばかりが収められているので、お気に入りのアルバムなのです。アーティストアルバムらしく各楽曲は一貫した雰囲気を感じさせながら、全体のバリエーションとしては多様である点も疲れず飽きずに楽しめるポイントです。

 インテリジェンスやジャズバーを思わせる雰囲気の楽曲や、往年のフュージョンを思わせるような楽曲。この人たち絶対に良い子・阿呆な子だろうと思わせるように明朗な楽曲。そうかと思えば、まるで女の子が孤独に陰鬱と浸っているかのごとくという辛気臭い楽曲。

 ほんと、演出様々に色々と収められています。それでいて、アレンジメントは「っぽい」の範疇で独特の個性によって昇華されているため、何とも楽しいのですよね。野郎からしてみれば「笑える女子の実態」から「ドン引きする女子の実態」まで散らかっているようで、全体的には一貫した個性や雰囲気を感じさせる点も素敵なのです。

 何より、二人の声色のギャップが個性も際立っていて良い感じですね。

 あと、ラップアーティストのアルバムだからと、苦手意識を覚える必要は特にありません。それこそアレンジメントなどは一般的なポップソングとは異なりイントロだのサビだのメロディラインだのといった構成概念は希薄傾向です。楽曲は全体で個という傾向が強いため、メリハリや明瞭さという点では欠けるかも知れません。しかしながら、全体的には非常にポップソングらしさも意識しているだろう曲ばかりですので、取っ付きは抜群に良いはずです。

 肝心のラップに関しても、私はラップの知識は浅いので何ともですが、ひねくれることなく王道的に韻の揃う気持ち良さを感じることが出来ると思います。そこには多少の俗語も散見しますが、意図的に人を不快にさせるような言葉は決して使っていないという印象ですね。

 たぶん、人並みに苦楽を過ごしたような、育ちの良い人たちによる作品ですよ。

 ただし、新進気鋭のファーストアルバムであるからか、このchelmicoには少し残念に思える点もあります。それは調整的な問題であり、音像やピッチという個性とは異なる技術的な面に粗削りと感じる点が散見していることです。世に氾濫している完璧に仕上げられた統一的作品に慣れてしまっている方にとっては、やや許容を大きくしないと些細なことが気になってしまうかも知れません。

 でも、それは溢れる個性とエネルギッシュな創作意欲の裏返しのようにも感じられ、それら粗削りなサウンドも込みで非常に個性の溢れるアルバムとして完成している点は確かですね。

 何と言うのか、それこそPia-no-jaC(ピアノジャック)のファーストアルバムのように「絶対に勢いだけで作ったでしょ!」と感じさせる楽曲や音たちの放つ雰囲気が、何とも言えない個性として昇華されているのです。楽曲が汎用的で際立つ個性が無いとサウンドで攻める他ないのでしょうけれど、音楽に魅力的な個性が十二分に含まれているからこそフォローできてしまうのでしょう。

 まぁ、ほとんどの収録曲にポップソングらしく「このフレーズはキラーでしょ」というラインが盛り込まれているのですが、それらを見事に塩対応が如くさらっと流してしまうあたり、やっぱりラップアーティストなのだなと思わせるところで面白かったのです。そこはラップアーティストらしく確実に詞先なのかなと思わせてくれたりなんだりで、非常に勉強になりました。この不均衡さは、噛めば噛むほど味わえる肴です。

 めでたくメジャーデビューということで、売れ始めると「より売れるように」と色々と変化してしまうのは産業の常なのです。このchelmicoは起点であり、帰点的作品となると良いですね。

 一方でメジャーよりリリースされているアルバム(POWER)は、Chelmicoらしく細かな演出に凝った作りとなっていますが、らしく全体としては大衆向け商品らしい音像・曲調となっています。ポップス大好き音圧ピッチ完璧主義な方は、そちらから突入してみることをおすすめします。

 このchelmicoの方は、全体的に明るい曲も暗い曲も絶妙に煮え切らないアンニュイなテンションが特徴的で、メジャーの方向性とは真逆の志向を感じさせるところですから。このゆるさは、とても耳馴染みが良いのです。

 アップテンポなのに「ゆるい」って、それこそ個性として持ち合わせていないと中々に達成することが出来ませんからね。ありそうで稀有なものなのです。


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