旧三級品は味が変わったか検証してみた

喫煙に関する内容を含みます



 概要:紙巻「旧三級品」の味や香りが変わったかを検証

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 値上げとともに一部で大幅な仕様変更を実施した旧三級品について。紙巻「旧三級品の味」について、検証とともに私的な感想や意見を述べてみた。


▼前置きと旧三級品の基本情報


 様々な種類の煙草が存在する中で、JTこと日本たばこ産業が擁している「旧三級品」というカテゴリーに属する煙草があります。大別すれば一般的なシガレットに属する旧三級品は俗に「安煙草」などとも呼ばれる煙草たちで、その呼ばれの通りに多くの銘柄と比べると非常に安価な価格設定が特徴の一つとなっているカテゴリーですね。その安価な理由は、他銘柄の製造時に余った材料や通常では使用しない品質の低い葉や部位を使用することで贅沢品としての格が下がるため、一般的な課税よりも額の低い「特別税率」という課税率が適用されるからです。酒で言うなれば、生ビールに対しての発泡酒や第三のビールといったところでしょう。

 しかしながら、この旧三級品に適用されていた特別税率は2015年に「段階的な廃止」が決定したことは貴方の記憶に留められているでしょうか。理由は定かではありませんが、この決定により旧三級品は徐々に値上がりしていくことが決定したわけですね。最終的な販売価格が幾らになるのかは不明ですが、この廃止に際して2016年には値上げの第一弾が実施されました。

 さて、気になるのは値段もさておきですが、その第一弾の値上げに際して旧三級品たちは長きに渡り変わらずであった仕様を改めることともなったのですよ。その変更は銘柄により大なり小なりですが、諸元上だけでも銘柄によっては中々の変わりっぷりだったりします。

 ということで、私的に旧三級品の新旧を集めて「味が変わったか、どうなのか」を焦点にして吸い比べを行ってみたのです。

 ちなみに、旧三級品は「ゴールデンバット」「しんせい」「エコー」「わかば」の他に、沖縄県限定販売の琉球煙草銘柄でもある「うるま」と「バイオレット」も該当するのですが、そちらは今のところ単に値上がりのみの価格変更なので割愛させていただきます。

 それでは、発売年が若い順にていきましょう。


▼わかば


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 まずは、1966年に発売したという「わかば」ですね。沖縄向けを除く旧三級品では唯一ロングサイズなフィルターシガレットを採用する銘柄で、その仕様から民主党与党時の大増税以降にシェアを急伸長させた銘柄でもあります。それまでのマイナー銘柄な扱いとは打って変わり、現在では超有名銘柄と言っても過言ではないでしょう。

 そんな「わかば」は、この度の値上げに際する仕様変更にてビニール外装が施されるようになりましたね。しかしながら、変更は外装の追加のみとなっているため、メーカーは「味や香りに変更はありません」としています。

 では、いざ吸い比べてみましょう。そうすると、味や香りに変更は無いと言われた手前では当たり前といったところでしょうか、その味わいには大きな変化も見受けられませんでした。煙は濃厚ながら味わいは淡白気味に、フィルター付きながら吸い方を雑に済まそうとすれば辛味が突出しやすい点などなど、相変わらずな今まで通りの「わかば」ですね。

 しかしながら、シガレットの香りを始め、喫味の方にも素朴な甘い香りが増している印象を覚えます。これは追加されたビニール外装による鮮度維持能力の向上なのでしょうか、微々たる程度でありながら比べれば確かに分かる程度に分かりやすいものとなっていると思います。そのおかげで、今までの豊かな煙量と淡白気味な味わいによるアンバランス感が少しだけ解消されているのです。

 ただし、そこに感けて(かまけて)喫し方が雑になると、やはり辛味が突出しやすいところは相変わらず。こればかりは今まで通りで、気を付けたいところ。

 結論:特に味や香りに変化は無いという範疇で良いでしょう。

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▼エコー


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 お次は1968年に発売されたという「エコー」ですね。こちらも先の「わかば」と同じように、度重なる増税によりシェアを急伸長させた銘柄となっています。仕様はレギュラーサイズのフィルター付きシガレットであり、わかばよりもシガレットが少し短めながら比べて安い価格設定により同じくらいの人気を誇る銘柄だったり。

 そんなエコーも、わかばと同じように今回の値上げに際する仕様の変更はビニール外装の追加のみとなっています。もちろん、メーカーも「味や香りに変更はありません」とアナウンスをしているのです。

 ではでは、吸い比べです。そうすると、わかばと同じリアクションとでも言いましょうか、やはり今まで通りのエコーなのでした。どれほどの香料を使用しているのかと思ってしまうほどに強烈な甘い香りを漂わせるシガレットと、その香りに負けじとボワッとした濃くも粗野な甘味を辛味とともに呈する味わい。それは、正に今まで通りのエコーなのです。

 しかしながら、こちらも先の「わかば」と同じように、シガレットの香りや喫味の香りが増していますね。ビニール外装による保存性向上効果なのでしょう。おかげでボワッとした喫味に少しの華と輪郭が現れ始めているため、ちょっとだけ味わいも良くなったように感じられます。

 ただし、やはりエコーです。巻きには明るく硬い葉脈の混じり方も目立ちますし、まとまりに欠ける甘味に漏れなくセットで付いてくる辛味は豊富な煙量と合わせて中々にパンチがありますから。お世辞にも「美味い」や「吸いやすい」などといった煙草ではないでしょう。それでも個性を感じさせてくれる喫味は、何とも妙に良い感じなのですけれどね。

 結論:わかばと同じ傾向の変化が僅かに見受けられるものの、わかばと異なり本の香りが強烈であるために体感する変化は微々たるところ。やはり相変わらずのエコーという範疇でしょう。

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▼しんせい


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 さて、お次は飛んで1949年に発売したという「しんせい」です。それまでの大蔵省専売局を改め、日本専売公社が発足した年でもあるそうですね。戦後復興を掲げる時代に「新生」という名でリリースされた煙草ということで、中々に歴史を感じさせてくれる煙草なのです。旧三級品の中では地味な存在ながら、銭形幸一の愛飲銘柄として有名だったり。

 では、まず今回の値上げに際する「しんせい」の仕様の変更内容ですが、こちらは先のエコーなどのように簡単なものではありません。もちろん、ビニール外装が施されるようになった点は共通の変更内容となっているのですが、この煙草は他の点も仕様を改めています。

 まずは、今回の値上げを機にフィルター付きとなったという点です。サイズは今まで通りにレギュラーサイズを採用してはいますが、今までの両切り仕様を改めてフィルターシガレットとなったのです。そして、フィルター付きとなったことの副産物的変化でしょうか、タール数値も今までのTar22mgからTar15mgへと変更されています。フィルターの有無も然る事ながら、その差は7mgと大きな変化となっていますね。

 この通りにより、しんせいにおいてはメーカーも味や香りが変わった旨をアナウンスしているのです。パッケージにデザインされた告知によると「すっきりとした味わいそのままに、タール値が15mgに変更になりました。」とされています。すっきりがそのままという点に対する疑問は置いておくとして、文面から察するに味や香りは今までのものを踏襲しているような含みではあります。

 それでは、吸い比べてみましょう。そうすると、明らかに今までの「しんせい」とは異なるキャラクターを感じ取ることとなりました。やはり一番の要因はフィルター付きなどによる大きなタール数値の低下でしょうか、まず煙の質感が大きく変わっていますね。喫し方への許容が広くなったような印象で、ある程度はラフに喫してもダメとまではならない寛容さを身に付けるに至っていると思います。

 そして、何よりもフィルター付きになり喫しやすくなった反面で薄らいだものは「丁寧に喫した時の御褒美」であると思っています。旧しんせいは雑に喫すれば不味いばかりの煙草であったですが、正しい所作をもって喫すれば素朴な甘味と質感も劇的に改善されるというストイックな傾向の煙草でした。それがフィルター付きと当たり障りの無い喫しやすさを得た手前で、如何に丁寧に喫しようが本領を発揮するような様を感じることが無くなってしまった感じなのです。

 総じて、確かに新旧ともに「しんせい」の味わいであることに変わりはありません。しかしながら、己の喫し方の如何(いかん)で表情の大きく変わる旧しんせいと比べ、新しんせいは平均的に仕事をこなすキャラクターとでも言うのでしょうか。ちょっと「のっぺらぼう」な感じに微妙な気持ちになってしまうかも知れませんね。

 結論:確かに素朴な甘味と絶妙な淡白感が軽快さを演出している点に「しんせい」らしい味わいを感じる仕上がりではあります。フィルター付きになりタール数値が低下したことで喫し方へのキャパシティが広がったことも良いことなのですが、旧しんせいを巧みに喫して楽しんでいた方にとっては如何に丁寧に喫しても旧しんせいに追いつけないもどかしさを感じるのでしょう。

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▼ゴールデンバット


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 最後は旧三級品の長とも言える通称:バットこと「ゴールデンバット」です。発売は1906年と、他の旧三級品とは元号も変わり明治時代より続く超ロングセラーな銘柄なのです。当初は中国向けの輸出銘柄として誕生した銘柄であったために、中国では縁起物である蝙蝠(こうもり)をモチーフにしたのだとかなんとか。

 ちなみに、このゴールデンバットも先の「しんせい」と同様に、ビニール外装の追加とともにフィルター付きとなりタール数値もTar18mgからTar15mgへと変更されています。パッケージにも「すっきりとしたあじわいそのままに、タール値が15mgに変更になりました。」と、しんせいと同じ告知が施されているのです。やはり「すっきりとした味わいはそのままに」という点は腑に落ちませんが置いておくとして、メーカーも味や香りが変更されている旨を発表しているわけですね。

 では、吸い比べてみました。そうすると、大きな仕様変更を実施したわりには中々にゴールデンバットらしい味わいで少し驚くこととなります。確かに、フィルター付きになったことやタール数値が少しだけ低下したことにより煙の質感が優しくなっています。しかしながら、味わいの方はモサッと従来のゴールデンバットの味わいを踏襲しているので、質感が柔らかくなった分だけ味わいを意識しやすいものとなっているのです。

 何と言うのか、味わいのキャラクターや個性は据え置きに、その媒体である煙の質感はフィルターによりマイルド化されているような感じですね。煙の角が少しだけ失せたため、味わいが良く感じられる点は私的に良い感じなのです。

 結論:吸いやすくなったゴールデンバットという言い方が妙であり、確かに厳密には味わいも変わりましたがキャラクターに大きな変わりも無しという範疇ですね。ゴールデンバットを愛飲していたことで知られる太宰治も今の世に生きる人だったのなら、間違い無く新ゴールデンバットを愛飲することでしょう。

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▼総合


 わかばとエコーは特に変わりも無く、強いて言うなればビニール外装の追加により本来に近い味わいや香りを楽しむことが出来るに至ったといったところでしょう。続いてゴールデンバットは、厳密には別物となったものの確かなゴールデンバットそのままであり、今まで通りに楽しめる仕上がりとなっています。

 しんせいは、今回の仕様変更を実施した旧三級品の中では「変化」という点に顕著であると思いました。グラフィックもスキルも変わらないシリーズ常連キャラなのだけれど、今回はステータスが大幅に補正されたキャラという感じですかね。

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 ということで、特別税率の段階的廃止に伴い実施された値上げと仕様変更ですが、今後も段階的に値上げは実施されることが決定しています。その際にも今回のように何か変更が加えられるかは分かりません。しかし、どれも昔ながらの安煙草ではあれど趣のある素敵な煙草たちなので、しっぽりと楽しむこととしましょう。

 ちなみに、これら旧三級品の最終的な価格に関しては2017年にウィンストンブランドにて旧三級品のようなレギュラーサイズのシリーズが380円にてリリースされることから、勝手に380円クラスに落ち着かせる気でいるのかなと予想しています。その時の他の煙草価格が如何なものかは想像も尽きませんので、あくまで「380円クラス」という予想ですね。その現在の380円クラスが値上げを実施すれば、そこに追従して旧三級品の価格は落ち着くのではないでしょうか。

 また、私感ついでに一つ。意外と私的には新ゴールデンバットは好みの煙草でした。新しんせいも中々に好みなのですが、ちょっと旧しんせいと比べてしまうと面白みに欠ける点に腑に落ちないところなのです。しかしながら、パッケージデザインなどを含む総合的な好みは新しんせいの方が上だったり。


▼余談


 ここからは余談なのですが、煙草税やフィルター付きという記事の内容から一つの無駄話を。日本が煙草の専売制を導入した理由の一つには「口付き煙草と両切り煙草」というものが少なからずと関係しているらしいのですね。

 先の通りで、ゴールデンバットがリリースされる少し前までは日本に煙草製品の専売制は無く、様々な商会が煙草を製造して販売していたそうです。江戸の開国から始まる激動の時代ですから、海外の製品や材料に技術などが流入していったことも容易く察しが付くことでしょう。取り分け、明治の煙草王による「東の岩谷商会」と「西の村井兄弟商会」は日本の煙草市場に大きな影響を与えます。その中でも日本で初めて両切り煙草を販売した村井兄弟商会は、その激動の時代に大きく伸長する様を買われて現在のブリティッシュアメリカンタバコの前身でもあるアメリカンタバコカンパニーと資本提携をし、海外の煙草葉や技術および戦術を駆使したハイカラさを武器に市場を席巻します。当時はキセルが主流であった中で、紙巻煙草というものを日本に広めた立役者ですね。対する岩谷商会は国産原料を用いた口付き煙草を主力に、自社の天狗煙草というブランドより「愛国天狗」や「輸入退治天狗」といった銘柄で市場を席巻します。

 そして、実のところは日本への進出を目論むアメリカンタバコカンパニーと提携した村井兄弟商会は、波乱とともに激化する市場において美味なる米国煙草葉や米国仕込みのマーケティングなどを駆使し、当時の煙草市場の大部分を掌握していきます。しかしながら、アメリカンタバコカンパニーと資本提携した村井兄弟商会は工場を火災で失うなどの際に多額の増資を受け、その経営主導権をアメリカンタバコカンパニーに譲るかたちとなりました。時の巨大商会が外国資本の手に渡ったことは日本にとっても大きな損失であり、時の人たちは日本の煙草産業の行く末を危惧したわけです。それと同時に、明治維新後の近代化を掲げる日本は国家の財源確保も最重要課題であったために対策を迫られるわけですね。その結果が、租税の確保と外国資本の管理や排斥が同時に行える専売制の導入というわけなのです。

 詰まるところ、アメリカンタバコカンパニーないしブリティッシュアメリカンタバコは新たな風を日本に運び、そして出る杭は打たれるがごとく締め出されたというわけです。現在の同社も似たような節は散見されますし、それは例えばカプセルシガレットを持ち込み後発である他社のカプセルシガレットの方が売れているということ等々。今でこそ市場とともに萎縮してしまっているためか少し二番煎じが多くなってしまったメーカーではありますが、私的にソニー的なアホさが素敵な魅力に感じるメーカーなのですよね。それが、こんなにも昔から受け継がれているスピリットなのだと知った時には、思わず笑ってしまいましたから。

 ちなみに、この煙草製品への課税は明治9年より印紙による課税から始まったそうです。その後の明治31年には戦争に充てる税収を増やすべく「煙草葉専売法」を実施し、煙草葉にも課税が行われたのだとか。ただし、その煙草葉専売法は煙草葉のみの管理となるため、輸入煙草製品や闇煙草葉の氾濫を招き期待するほどの税収は得られなかったそうな。そして、先の村井兄弟商会などの国内市場危機の件もあり、原料から製品の輸入に移入までと、煙草に関わる全てを国が管理する「煙草専売法」へシフトしたわけですね。

 また、今も煙草は専売制の品だと思っている方も多いと思いますが、現在は大蔵省専売局も日本専売公社もありません。専売法に代わり改めて制定された「たばこ事業法」と、皆様ご存知の民間会社である「日本たばこ産業株式会社」があります。しかしながら、国が管理するわけではないものの実際は殆どの株を国が保有しているわけですし、事実上は管理状態ですよね。資本主義と自由競争を謳うのなら、煙草も自由価格にしてしまえば良いのにね。変なところだけヒットラーに倣いたがるというのは、実に困ったものなのです。

 あ、そうそう。口付き煙草をフィルターシガレットと混同してしまう方は年配の方に多く見受けられますが、それらは実際には別物です。口付き煙草というのは現在のようなフィルターシガレットではなく、吸い口として空洞のチップが付いた煙草のことなのです。ざっくりと言ってしまえば現在のフィルターシガレットのフィルターを取り除いたような製品で、空っぽのチップ部分を手でペッタンコに潰して喫するというもの。国産で有名な口付き煙草としては「朝日」などがあります。

 では、そろそろ言いたいことも尽きてきたようなので、いつものように締りも悪く終わります。長々と読んでいただき、ありがとうございました。

Nutrition Facts
Serving Size: 1 Cigarette
Tar---mg Nicotine---mg
Strictly No Taking. Don't smoke until you are 20 years old.lol


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