飲酒に関する内容を含みます
概要:ビール「水曜日のネコ」のレビュー
長野県が誇る避暑地は軽井沢で造られているクラフトビール。ビール「水曜日のネコ」を飲んでみた。
国産クラフトビールブームの火付け役ともなったと言われる「よなよなエール」で有名な、長野県北佐久郡軽井沢町に本社を構えるヤッホーブルーイング。いわゆる軽井沢の地ビールメーカーである同社がラインナップする、ちょっと変わった名前の商品が、この「水曜日のネコ」なのです。
同社は水曜日のネコの他にも「僕ビール、君ビール。」など、一風変わった銘柄を揃える地ビールメーカーのようです。その面白いラインナップからも何となく察する通り、創業1997年と比較的近年からの地ビールメーカーですが、実は星野リゾートとキリンビールという巨大企業による歴としたメーカーだったりします。
何だか「こういう絵画ありそうね」といった感じのデザインは、ちょっと日本のビールらしくない印象となっているのです。缶ビールにしては珍しいカラーリングや風変わりな「水曜日のネコ」という商品名などと相まって、中々に特徴的なパッケージかと思います。
とりあえずは「ベルジャンホワイトビアスタイル」や「WHITE ALE」などと表示されていますが、正面には目立って「ビール」と記載されていません。ぱっと見はビールに見えないかも知れませんね。
猫好きな方も、思わず手に取ってしまいそうです。
そんな風変わりな見た目の水曜日のネコですが、内容としては軽快な飲み口とフルーツ&ハーブ感を売りとする「ベルジャンホワイトエール」というビールなのだそうな。
そのベルジャンホワイトエールというのは、ベルギー発祥のビールの種類だそうです。大麦と小麦の両方を使用して造られ「スパイスにオレンジピールとコリアンダーシードが使われているため、爽やかな香りと甘酸っぱい味わいがします」とメーカーは謳っています。
あと、併せて「普段はビールを飲まない方にも」と謳っていますが、味覚が正常ならビールは漏れなくビールの味なので、商売文句という程度に受け取っておきましょう。
そもそも、ビールはじめ酒類はアルコールを含みます。イギリスのデスの言葉を借りるならば、人生や命を合法的に奪うことが出来る数少ない手段の一つなのです。
ちなみに、水曜日のネコは基本的に「生ビール」という認識で良いと思うのですが、日本の法律の手前では「発泡酒」となっています。これは先の通り、製造過程でオレンジピールやコリアンダーシードといった原材料を使用し、指定外の製法となっているからなのでしょう。
あくまで製造法と法律上の理由で「生ビール」と表記することが出来ないだけなので、多くのクラフトビールと似たような値付けとなっているかと思います。
きれいな明るいビール色で、色味に不思議な点はありません。注いだ時点では香りも強すぎない印象ですかね。
味・香りについて感想
このビールは、味わいよりも香りにキャラクターを割り振ったような印象のビールとなっているのです。
まず、香りですが、とてもフレッシュ感のある爽やかな香りなのです。パッケージにも表現されているように、なるほどリンゴ系の酸を思わせる良い香りですね。ビール特有の金属臭も少なく、爽やかな清涼感ある香りが楽しめます。醸造酒らしいパン香や醤油香も控えめな印象のため、かなり軽快に思える香りです。
ただし、その香りの華やかさは注いだそばから失せていくので気を付けたいところです。少しの時間が経つと、うっすらとパンや醤油のような醸造酒らしい香りに偏りますから。
そして、味わいの方も非常にライトでマイルドな軽快系となっています。香りから想像も出来るように苦味は少なく、飲み心地に鈍重な印象は感じられません。徐々に醸造酒らしいパンや醤油のような風味に塗り替えられていきますが、飲み始めは爽やかな酸が感じられる味わいとなっているのです。
また、ビール特有の舌に残る金属のような味も控えめで、軽快な透明感を感じさせる味わいとなっていますね。すっきりという印象とは少し異なるのですが、軽い飲み口が特徴のビールという認識で良いのかなと思います。
ちなみに、缶ビールは金属容器だから金属の味がするという方も多いのですが、ビールの金属味はビールそのものの味なので基本的に容器は関係ありません。サーバー樽だろうが瓶だろうが缶だろうが何だろうが、少なくとも私は金属的な印象を覚えますよ。
そもそも、現代の食品用缶容器は内容物が触れる面に衛生的なコーティングを施しているでしょうし。
で、全体的な風味はフローラルというよりもフルーティーといったキャラクターですが、あまり特殊な香りが強いという印象は特に覚えませんでした。先のように飲み始めをメインにリンゴの酸を思わせる爽やかな清涼感が鼻腔を抜けますが、あからさまに分かりやすいという香りでもなく、あくまでビールらしいビールとして楽しめるかと。
しっかりと経過とともに醸造モノらしい味は感じられるので、軽い飲み口だからと物足りない思いもしないでしょう。それは反面で「この程度でビールが苦手な方に勧める気にはならないかな」とも思いましたけれど。
しかしながら、確かに比べれば飲み口も軽めで飲みの進みやすい部類のビールかと思います。舌の上で味覚として感じる味を楽しむというよりも、鼻から抜ける香りと合わせて風味を楽しむといった向きの強いビールなのです。
あと、やや後味に納豆などの大豆発酵食品を思わせる風味が強めに残るように思えましたが、これも苦味や金属臭の少なさゆえの相対的なバランスなのかなと思います。後味そのものは非常に薄い部類と言えるでしょうしね。
総じて、なるほど飲みやすいビールなのです。味は淡白に香り程よくといったバランスで、苦手意識を持つ方も多いだろう苦味や金属味も薄めです。香りは並に感じられますが、総合的には青島やバドワイザーよりも軽くてマイルドなビールと思えるかも知れません。
私的に少し今一つだった点は、せっかくの心地の良い酸による清涼感が持続しなかった点でしょうか。わりと早々に失せてしまい、飲み終わる頃には何だか記憶に残らない味・風味で締め括られてしまった印象なのです。
何と言うのか、良くも悪くも、せっかくの嗜好品らしく求めたいキャラクターが薄めなのですかね。ビールが好きな方は箸休め程度に物足りなく思うでしょうし、ビールが嫌いな方は並にビールと思うような塩梅で、これが何とも言い難いところなのです。
ある意味で、パッケージから受ける印象が見事に体現されているビールだなとは思いましたけれど。
その他には、これが思いのほか肴に悩むビールとも思いました。ビールなのでオールマイティーではあるのですが、どうも「これだ」と思う手頃な肴が思い浮かばなかったのです。
ビールの方に苦味が少ないので、塩気のある食べ物だとビールの苦味が相殺されすぎてビールが醤油になってしまいます。ビールそのものの味気は薄いので、舌は肴で鼻はビールと妙にバランスが悪く感じてしまう印象なのです。
だからと言って、しおらしく水曜日のネコだけで充実できるかというと、これがまた微妙なところ。
やはり、メインターゲットはメーカーの言う通り女性といったところでしょうか。もしくは体力が落ちてボディの大きい酒を忌避するようになった方に向いているかも知れません。
正に水曜日。勤労サイクルの中日という峠において、羽根を伸ばして磊落と気を抜くということもできない日の晩酌に程よいビールなのかなと思いました。これは羽根を伸ばすためのビールではなく、ちょっとでも良いからアルコールに侵されて嫌なことから開放されるための銘柄なのでしょう。
ということで、ネコという表現は間違っていますね。これは「水曜日の社畜」なのです。どちらかと言えば、イヌではと思いました。
しかしまぁ、何故か水曜日のネコは公式で女性やビールを飲まない方に勧められている銘柄ですが、飲酒による女性特有の健康リスクというのも一部で指摘されていますから。後悔の念に駆られ騙されたということのないように気を付けて下さいね。
ところで、たまに煙草を吸いながら酒を飲む時に思うのですが、何故にアルコール商品には健康被害の周知拡大のための目立つ警告文などを煙草のように設けないのでしょうかね。たまに飲用アルコール業界の無謬・利己体質や傲慢のように感じてしまい嫌気がさすのです。
政治献金という賄賂もほどほどに、そろそろアルコール業界も性悪説に倣った方が良い時代かと。誇りという諦めもほどほどに、そろそろ次のステージに向かっても良い頃合いかと。
と、酔いが回ると少し愚痴っぽくなってしまいましたね。シラフでも大差は無いかも知れませんが、関係の無い小言で失礼しました。飲酒・喫煙に関する自称健康団体の意見は因果関係もどきや疑いどころが散見していますし、その反対側も利己的な意識が丸見えですから、あくまで意見程度に聞いておきましょう。
良い話も悪い話も噂程度で、みんな自分の都合の良いように押し付けるわけですから。喫煙も飲酒も近いうちに淘汰されて変化していく文化ですし、今のうちに古典文化として楽しむというのもアリなのではないでしょうか。
▼あわせて他記事どうぞ▼
珍食品レポートの一覧へ戻る