Treasurer Black を吸ってみた

トレジャラー・ブラック の喫煙感想

 世界一高級を謳う英国はトレジャラーというブランドのフラッグシップ銘柄。紙巻「トレジャラー・ブラック」を吸ってみた。


銘柄概要

 英国はロンドン発の「トレジャラー」というブランドは、シガレットの世界において「世界で最も高価な煙草」として有名なブランドです。世界最高級の煙草を世に贈るべくして1999年に立ち上げられたブランドとのことで、上質なバージニアリーフを使用した銘柄が輝きを放っています。

 基本的に、同ブランドは最高級のバージニア葉を余計な添加物を使用せずにレシピを開発しているそうです。どちらかというと、素材志向に偏ったタイプの高級ブランドだと言えるでしょう。

 この煙草は、そんなトレジャラーのフラッグシップであるトレジャラー・ブラックという銘柄なのです。ここ最近は煙草の価格改定も頻繁に行われているので一概ではありませんが、おおよそ常に一般的な20本入りシガレットに対して5倍から6倍の価格が設定されている銘柄となっているようです。

 2019年初夏現在、有名な外国銘柄のマールボロは510円であり、日本たばこ産業がリリースしている高級銘柄であるザ・ピースは1,000円となっています。それらを参考にしても、このトレジャラー・ブラックは3,000円という販売価格が設定されているので、如何に高価な銘柄であるかは一目瞭然でしょう。

 もちろん、1箱に詰められたシガレットは多くと同じように20本であり、決して徳用というわけではありません。あくまで、ひたすらに高級銘柄なのです。

 ちなみに、そんな高級志向なトレジャラーにも廉価版はラインナップされています。このフラッグシップの下には、やや安価となるラグジュアリーシリーズの他に、並みのシガレットと同等価格の最廉価版であるスリムシリーズやエグゼクティブシリーズが用意されているのです。

 ただし、いずれもフラッグシップのトレジャラー譲りであるレシピを採用しているとのことです。廉価シリーズですら上々の出来であると感じましたから、その本家であるトレジャラー・ブラックには非常にワクワクしてしまいますね。

 パッケージングの方は、ラウンド形状の缶パッケージがセロファン包装されています。缶の材質は、やや剛性に乏しい印象のアルミですね。

 一般的な紙製のフリップトップパッケージの延長といったようなダビドフ・マグナムや、厳重包装スチール缶パッケージであるザ・ピースなどと比べると、ちょうど中間的な質感を覚えさせるパッケージのように思えます。開閉仕様やサイズ感的には、ザ・ピースの平型缶パッケージと似たような感じと言えるでしょう。

 ただし、このトレジャラー・ブラックのパッケージですが、思いのほか実物は安っぽさも感じられるといったところでしょうか。

 作りとしては、薄いアルミ板をペーパークラフトのように曲げて作られているパッケージです。ぱっと見のカッチリ感に対して、手に取ってみた時にタイトな印象が乏しいというギャップによるものかも知れません。

 まぁ、それでも心躍るパッケージに変わりはありませんね。しかしながら、作りの都合上ですが、薄いアルミ板の切り口に怪我などの防止加工が施されていません。

 怪我しないように注意して下さい。

 バーコード横には計測値が表示されていて、タール数値とニコチン数値は10mgの0.8mgとなっています。

 反対側には、トレジャラーのメーカーである「チャンセラータバコカンパニー」が表示されていますね。同社のウェブサイトでラインナップを確認すると、正にラグジュアリーな高級志向品といったキャラクターのメーカーであることが分かると思います。

 パッケージ背面には、要約すると「良い煙草だよ」という内容のメッセージが表示されています。この手のメッセージは価格に関係なく様々な銘柄にて散見していますが、トレジャラー・ブラックの場合は重みというのか、凄みが違いますよね。

 だって、コンセプトがガチガチですもん。

 で、ケースオープンしてみると、シガレットはアルミの中包装紙で簡易的に包まれています。

 ちなみに、特に香料などを使用していないためか、わりとパッケージングの気密性は低そうですね。よくよく観察してみると、アルミ缶パッケージは作りの都合で所々に隙間がありますし、中包装紙もアルミとはいえシガレットの全周囲を包んでいるというわけではありません。外装もセロファンのみでしたし。

 それこそ、完全密封&超重包装のザ・ピースのパッケージングはおろか、機能性は一般的なボックスシガレットのパッケージと比べても気劣るようにも思えます。しかしながら、これは湿度の管理さえ気を使えば良いという裏返しなのかも知れません。

 じっくりと加湿したら、化けそうですね。

 トレジャラーと言えば絢爛なゴールドカラーです。この煙草では、アルミ中包装紙の内側もゴールドカラーということもあり、視覚的に非常に豪華なことになっています。

 というか、実際に眩しい。

 とまぁ、それは良いとして。黒い巻紙も、さり気なくロゴがスタンプされていて、喫する前から浸らせてくれますね。フィルターはチャコールを使用しないプレーンタイプとなっていて、フィルターチップには細かな空気穴が設けられています。

 あと、何気に葉の詰まり方がピッチリとしています。単純に使用している葉の量が多そうな印象なのです。

 あと、シガレットの間仕切りも兼ねて、メッセージカードが仕込まれていました。しっかりとした厚みのある、プリント紙となっています。

 内容は特に読んでいませんが、こういうの、良いですよね。何となく気分を上々にしてくれるのです。


吸ってみた感想・味・香り

 この煙草は、いやぁ、やっぱり世界最高級は凄いですね。伊達ではありません。

 まず、シガレットの香りですが、分かりやすく例えるのなら、いわゆる「ドラム」などのような香りです。素材的な香りには着香感は全く無く、本当に「煙草の香り」なのです。

 アメリカンタイプが多く出回る昨今では、この手のシガレットの香りは印象的とも思えるかも知れません。しかしながら、これは特別に面白いという香りでもないため、このシガレットの香りには分かりやすい面白みというのは感じないかも知れませんね。

 愛煙家からしてみれば、とりあえず「うふふ」となる香りなのですけれど。

 そして、喫味の方ですが、これがまた上品でいて圧巻なのですよ。柔らかいのに、優しいのに、ものすごい圧です。棘や粗さのない吸い心地は至極スムースであり、それでいてコクが非常に奥深いものとなっています。これはシガレットというよりも、まるで葉巻のようなコクと深みなのです。

 しかしながら、しっかりと吸い心地はシガレットらしいものとなっています。シガレットの良さに葉巻の良さを付与したような感じであり、シガレットのデメリットは見事に排斥されていると言って良いでしょう。

 味わいも豊かな旨味やコクとともに、とても煙草らしい上品な甘みがあり、非常にラグジュアリーな味わいとなっています。ほんの僅かに苦味もありますが、それは隠し味といった程度に、酸味や渋味などは含まれません。

 最近はコストカット重視なのか、はたまた味わいよりも軽さなのか、酸味が味わいそのものよりも目立ちバランスの悪い煙草も多く、少し食傷気味でしたから。とっても好印象なのです。

 また、煙も絹のような質感ですね。トレジャラー・ブラックは余計な添加物を使用していないということですが、それ以上に巻紙の質の良さも窺えます。色付きの巻紙、特に黒色の巻紙って私的に印象も宜しくないものでしたが、これは障ることもなく別格なのです。

 シガレットは巻紙の質が全体のクオリティに大きく作用するものですが、この煙草の味わいには巻紙の存在感がありません。これは非常に喜ばしく、シガレットの全体のクオリティを考慮できている証と思えるところです。

 ほんと、高らかに味わいにを謳っていようとも、その味わいが巻紙のせいで台無しになっていると感じさせる銘柄というのは、意外と多いものですからね。

 ちなみに、もし「巻紙が味わいを阻害する」という話に要領を得ないのでしたら、モンテパス社のシガレットなどが良い教材になるかと思います。日本では、アークローヤルやフロイドなどが同社製品として流通していますよ。

 話はトレジャラー・ブラックに戻しますが、中盤からは心地の良い甘みだけが少しだけ増します。このように自然なカーブで味わいは変化していきますが、味わいを崩すような要素は終始なく、一つのシガレットを飽きることもなく上質に堪能することが出来るのです。

 凄いですねぇ。これが最高級シガレットなのですかと、脱帽してしまいます。紙巻党の私としては、上質な紙巻との出会いは背中を押してくれているようで少し嬉しい気分にもなるものです。

 更には、葉の詰まりの良いシガレットから想像していた通り、シガレットあたりの喫煙時間も非常に長めです。アメリカンスピリットと比較しても遜色はないどころか、それよりも喫煙時間は長めといった印象ですね。私の場合は、1本で10分以上も楽しむことが出来ます。

 紫煙の香りも、甘く心地の良い香りとなっています。これは着香された人工的な印象の香りではなく、植物的な自然で心地の良い香りと言えるでしょう。

 総じて、名に、価格に、全く恥じない出来の煙草であることに間違いはありません。優しく上品に、なめらかに柔らかく、広がる旨味と甘味が圧倒的にラグジュアリーな煙草なのです。これは多くのシガレットが謳う「すっきり」や「マイルド」などとは異なります。確実に上質がゆえに喫しやすいのです。

 最近は、普及帯の銘柄も十二分なクオリティですけれどね。上物は存在するのだなと実感せざるを得ないのですよ。

 というか、この煙草を喫した後だと、大概の「スムース」と謳う銘柄に「どこがだよ!」という感想を抱くこととなるでしょう。

 ただし、このトレジャラー・ブラック。やはりヨーロッパらしい「高級に対する志向性および嗜好性」が強く現れているように思えることも事実です。それこそ同様のセグメントに属するザ・ピースと比較すると分かりやすいかと思いますが、どちらも高級であり内容も恥じないものであることに相違はないでしょう。

 しかしながら、喫味までも華やかに仕上げられたザ・ピースと比べると、トレジャラー・ブラックは正に「質実剛健」という言葉の体現です。ヨーロッパらしい「内が良いのだから外を飾る必要はない」といった志向性が、ひしひしと味わいから感じられます。

 もちろん、どちらが良くて悪いという浅薄な話ではありません。どちらも十人十色の良さ・悪さがありますが、物そのものの価値は不変ということです。

 まぁ、ざっくりと言えば、分かりやすく「凄い!」と感じるのは、どう考えてもザ・ピースでしょう。ここまで褒めちぎっておいて何ですが、トレジャラー・ブラックは喫煙に興味・関心の薄い方が喫すれば、恐らく特に何の感想も抱かずに吸い終えてしまうようなタイプの高級志向です。

 ワインやら日本酒やらと同じです。高級品も普及品も根本は同じゆえに、あからさまな特徴でもない限り高級であることを知らされていなければ大概は普通に飲まれるか捨てられるか無視されるか、そんなものですよね。トレジャラー・ブラックの良さというのは、それに近いものがあります。

 ただし、香りの作り方においてはザ・ピースというか、そもそも日本たばこ産業の右に出る者はいないのですが、トレジャラー・ブラックは群を抜く旨味やコクといった味わいを楽しめるはずです。ほんと、感動もの。

 何というのか、トレジャラー・ブラックの良さは「あるべき要素のみが昇華されている」といった仕上がりであり、そこにプラスアルファの要素はありません。分かりやすく言い換えるのなら、多くの煙草が共有する基本要素を非常に高い次元で完成させていてはいるものの、いわゆる「キャラクター付け」が無いのですね。

 この煙草の最大のキャラクターは「高級」であり、それは分かりやすいようで非常に分かりにくいものなのです。多くの日本人は、高級か否かの判断を「価格」という要素に傾倒しすぎますから。

 でなければ、毎年のようにガ●ト氏がテレビ番組でワインを飲む理由も無いわけですよ。まるでストラディバリウスだけが良いと世間が思う理由は、所詮「価格(希少価値)」なのですよ。

 あれ、ストラディバリウスというヴァイオリンが凄いんじゃないですからね。基本的に弾いている人が凄いんですからね。

 まぁ、確かに他にはないスキル持ちかも知れません。コスパは悪いとしか言いようもありませんが、世にはステータスをトドメの1ポイントぽっち上げるだけにも何億と課金する人がいるということです。

 もし、本当にストラディバリウスやガルネリが幾世紀も経ち未だに至高というのなら、それはそれでクラシック業界がギブソン状態と言うようなものです。それって、どうなのよ。

 何はともあれ、正に、喫煙を文化民俗的に愛おしく想う人間のための煙草なのでした。

 いやはや、ほんとに良い煙草。

Nutrition Facts
Serving Size: 1 Cigarette
Tar10mg Nicotine0.8mg
Don't smoke until you are 20 years old.lol


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