ナチュラル・アメリカン・スピリット・アガット の喫煙感想
遅摘みの煙草葉を使用したという完全新規レシピのナチュラルアメリカンスピリット。紙巻「ナチュラル・アメリカン・スピリット・アガット」を吸ってみた。
銘柄概要
無添加煙草の代名詞的存在ともなっているナチュラル・アメリカン・スピリットは、アメスピの愛称で親しまれていますね。1990年代からアメリカのニューメキシコ州サンタフェにあるサンタフェナチュラルタバコという煙草メーカーが製造・販売する比較的新興のブランドでしたが、瞬く間に世界的ブランドへと伸長していきました。
現在ではJTがサンタフェナチュラルタバコの親会社であるレイノルズからアメリカンスピリットに関わる事業を買収したことにより、レイノルズの本拠地である米国以外での流通はJTが取り仕切るかたちで展開されています。それに伴い、アメリカンスピリットの製造は米国から国内に移管されたことは記憶に新しいかも知れません。
まぁ、製造移管とはいえ、材料となる従来通りの煙草葉を輸入し、国内工場ではシガレット化しているだけだそうです。JTは高品質なフィルターメーカーとしても知られていますし、いわゆる集中管理や業務効率化の一環でしょう。
ただし、アメリカンスピリットが製造移管したことに伴い「味が変わった」などの意見も少なからず聞くことはあります。私的には「それ言うならJTが関わる前から、ころころ味が変わってたじゃん」というのが正直なところですけれど。
特にメンソール銘柄なんて、JTに関係なく前身の頃から味というか、仕様そのものが何度か変わってましたよね。
と、そんなナチュラル・アメリカン・スピリットは、ほとんどのシガレットで使用されている香料などといった添加物を全く使用しない「無添加」が売りとなっています。これは葉組のみでレシピが完結していて、基本的に煙草葉のみで味わいを作っていることを意味します。
ふりかけやおかずは無しに、米の産地や品種だけで勝負している一膳の米飯のような感じです。
ちなみに、人気の上昇とともにアメリカン・スピリットもラインナップは増えていきましたが、実のところレシピは銘柄の数ほども無かったりもします。要するに、いくつかのレシピを丸ごと流用するかたちでラインナップが成立しているのですね。
まず、ターコイズやゴールドで採用されている無農薬栽培の煙草葉を使用したレシピ。ペリックのみで採用されているペリック葉を使用したレシピ。そして、それ以外で使用されているレシピ。
だけ。※現在の日本市場に限り。
一見のバリエーションは豊富に見えますが、実のところは空気穴で調整しているかメンソールを添加しているかというところでしか差異は設けられていないので、おおまかには「バリエーション=フィルターの仕様の違い」といった基本構図となっているのです。
そして、このアガットは「遅摘みバージニア葉」を使用した、新たなオリジナルレシピということが最大の特徴となっています。
まず前提として、アメリカンスピリットは無添加という特徴の他に「煙草葉25%増量」という、一般的なシガレットと比べて使用されている煙草葉の量が25%も多いということが特徴となっていることは周知のことでしょう。しかしながら、この「無添加」と「煙草葉25%増量」という特徴に起因して、アメリカンスピリットでは特に吸い始めに「淡泊」や「煙量感に乏しい」という個性の裏返しともなるネガティブな印象が強いことも特徴となっています。
例えるのなら、真水を目の詰まりやすいストローで飲む感じです。
どうやら、この「遅摘みバージニア葉使用」という特徴は、これらのネガティブな要素を払拭する要素として採用されているとのことです。
詰まるところ、アメリカンスピリットの弱点ともいえる「吸い始めの弱々しさ」を克服し、吸い始めから確かな味わいと煙量感を呈することに一役を買っているということなのですね。
確かに、私はアメリカンスピリットの初段の肩透かし感が非常に苦手でしたので、そういった印象でアメリカンスピリットを忌避していた方へのアプローチを狙う意図もあるのかも知れません。
パッケージのカラーリングやカラーネームでバリエーションを彩っているアメリカンスピリットですが、今回は「Agate:アガット」と冠していますね。このアガットというのは「瑪瑙(めのう)」のことだそうで、綺麗なマーブル模様で産出地も多く比較的安価な宝石ということで、目にしたことのある方も多いはずです。
カタカナ表記や読み方は「アガット」だったり「アゲート」だったりするそうですが、この煙草では「アガット」となってます。
何というのか、アニメとかゲームみたいなサブカルだとアガットで、お堅いところだとアゲート。みたいな私的イメージがあります。
由来としては「アメリカンスピリットの誕生の地であるサンタフェの生命力を感じる力強い夕日で真っ赤に染まった空の色を表現している」と公式アナウンスされているようです。
ただ、私的にはアガット(瑪瑙)と言えば緑色のイメージが非常に強いので、何となく違和感を覚えなくもないところですね。どことなく、日本人はアガットが「赤:アカ」のイントネーションにイメージを混同されているような気もします。
また、ORGANIC TOBACCOではなくNATURAL TOBACCOという表記である時点で察しが付くかとは思いますが、この煙草はターコイズやゴールドのようなオーガニックシリーズではありません。普通に農薬栽培された煙草葉が使用されているという点では、ライトやウルトラ・ライトなどと共通です。
ただし、先にも述べた通り、この煙草は「遅摘み葉」を使用しているということで、完全に新規レシピとなっています。そういった点では、ペリックと同様に完全独立の単一レシピ銘柄なのですね。
とりあえず、古株のアメリカンスピリットファンからすると、このアガットはパッケージカラーが酷似している昔のナチュラル・アメリカン・スピリット・オーガニック(マルーン色のやつ)という煙草の再来のように思われてしまうかも知れませんが、実のところはオーガニックシリーズではないので要注意。
そして、パッケージ背面はアメリカンスピリットでは御馴染みのコラム欄となっています。
このコラムは複数種存在しますが、今回のパッケージのコラムを私なりに少し噛み砕いて要約すると、要するに、アメリカンスピリットは辛みや雑味の原因となりやすい葉脈(ようみゃく)の主脈を取り除き、上質な部分のみを使用しているのです。
さらに、煙草製品では製造中に製造ラインから外れてしまったような葉やグレードの低い葉を再加工して再びラインに戻したり他銘柄に使用することがあるのですが、そういったことを行っていないのですね。これらの葉は、俗に「屑葉」などと呼ばれることもあることから、あまり高級志向ではないようです。
まぁ、葉も食材と同じくで適材適所なので、いわゆる屑葉がダメなのかというと、そう限った話でもないはずです。一流シェフの味より母の味の方が絶対的に良いと感じることも多いでしょう。
パッケージサイドは、それこそ昔から変わらずに設けられている簡易仕様欄となっています。このパッケージサイドのコメントは、昔から内容が人知れず変更されることが度々あり、その度にユーザーは様々な憶測を交わしていましたね。
ただし、JTが関わるようになってからは、あやふやな内容は無くなったように思えます。
例えば、何が無添加なのかや、何に対して25%増量なのか、しっかりと明記されるようになりました。
ちなみに、タール数値は10mgとなっています。ここ最近は超ライト層の電子タバコへの移行が顕著であるためか、少し前までとは打って変わって、紙巻はライトクラス以上の比較的タール数値が高めな新製品が多い印象なのです。
そして、一般的にニコチン数値はタール数値の10%未満mgであることが大半である紙巻煙草にしては珍しく、アメリカンスピリットはニコチン数値がタール数値の10%以上であることが基本となっていますよね。このアガットでは、タール数値10mgに対して、ニコチン数値は1.5mgとなっています。
ざっくりと言ってしまえば、ニコチン値が1.5mgというのは、多くの場合でタール数値が18mgくらいの紙巻煙草のニコチン数値と言えるでしょう。このことから、割合としてニコチンの計測値は高いことが十分に分かるかと思います。
というか、Tar12mgのターコイズでもニコチン値は1.2mgなので、アガットはアメリカンスピリットの中でも特殊な印象を覚えます。シンプルなレシピのアメリカンスピリットゆえに、これは遅摘みバージニア葉の特徴と考えられるかも知れません。
ちなみに、アメリカンスピリットは添加物を使用していということもあり、JTが製造・販売に関わるようになっても賞味期限は設定されていませんね。封を開けてからは、早めに吸いましょう。
インサーターも入っていました。
当たり前かも知れませんが、インサーターの言葉尻からして全量が遅摘みバージニア葉ではないようです。
まぁ、さすがにアメリカンスピリットでも、そこまでの怠慢はしませんよね。
中包装紙は、環境配慮型のペーパータイプです。
これ、本当に従来のアルミ紙と同等の保存性能で環境負荷が軽減されるのなら、もっと普及すべきだと思います。ある程度の厚みもあり形状保持力も従来のアルミ紙より高そうなので、ソフトパックでも普及してほしいものですね。
デザインとしては、フロントにインディアンを象徴するコンドルのシンボルと、トップに「Please don't litter」という「ポイ捨てしないで下さい」といったメッセージです。
ポイ捨ては人権も捨てているようなものなので、実行する際は自宅に腐った生卵を投げ捨てられても構いませんと許可を出しているものと思って実行しているものとしましょう。
シガレットデザインは、相変わらずです。もはや、何も触れることは無いほど、相変わらずなのです。
空気穴は小さいものが1列で設けられています。
吸ってみた感想・味・香り
この煙草は、何というのか、ちょっと・・・。う~ん。
まず、シガレットの香りですが、これには特に感想もありませんね。ややアメリカンスピリットというよりはチェに近いような印象も覚えますが、至って煙草らしい甘辛い印象の香りとなっています。
そして、喫味の方ですが、なるほど確かにアメリカンスピリットにしては一吸い目から煙量も多めである印象です。多くのシガレットと比べれば少ないことは否めませんが、それでもアメリカンスピリットにしては多いことは確かでしょう。
味わいの方も、確かに煙量の多さに比例するように一吸い目からアメリカンスピリットにしては濃い口で呈されます。
ただし、この味わい。何というのか、やや雑味が多いような印象です。と言うよりも、全体像として雑味というような印象でしょうか。わりと雑味で濃い口に誤魔化しているような、そんな印象も覚えなくもありません。
決して苦味や辛味や渋味といったものが強いというわけでもなく、のどに引っかかるというわけでもないのですが、これといって旨味や甘味があるわけでもなく、香りが良いわけでもなく、すっきりとしているわけでもない。感覚的に「雑だなぁ」と感じてしまう味なのです。
引っかかるわけではないものの、吸い応えの演出の一環なのか、のどへのアタリも強めである点も全体的に悪い方へ印象に作用している気がします。
何だろう。あまり煙草らしくないというか、煙草ではなく「煙」という感じが非常に強く印象に残る煙草ですね。
そういった意味では、雑味ですら無く、取り柄が無いのかも知れません。決して吸えたもんじゃないというわけではないですから。
しかも、アメリカンスピリットらしく、25%増量された煙草葉と燃焼促進剤の無添加により他の煙草よりも長く、そして淡々と呈され続けます。この煙草に限っては、確実に25%増量の恩恵も無いように思えるところでしょう。
総じて、確かにアメリカンスピリットでも一吸い目からガッツリいきたいという方には向いているかも知れません。スモーキーに一辺倒ではありますが、決して美味いと思うことはなくとも、特に不味いとも思いませんから。
後味も、喫味のわりには悪い印象もありません。薄っすらと煙草感が残る程度です。
しっかり一吸い目から味わいさておき煙草感を堪能できて、尚且つアメリカンスピリットらしく煙草葉25%増量でシガレットあたりを長く喫したいという方にとっては、例えアメリカンスピリット銘柄でも替えはきかない銘柄と言えるでしょう。
ただし、これらが遅摘みバージニア葉によるものなのかは分かりませんが、上記の通り「ひたすら弱点克服に努めたら、そもそもの個性を失ってしまった感」は否めない煙草であるように思えます。アメリカンスピリットは淡泊ながらも薄く煙草らしい甘さに心地が良かったり、弱々しくも煙草の味わいと調和しているメンソール感が良かったりと、そもそも共通して「軟弱さ」が良し悪し表裏一体なのですよね。
アメリカンスピリットは味わい甲斐に乏しかったりシガレット当たりの喫煙時間とコストパフォーマンスが私にとっては不釣り合いで総合的に好みではないのですが、これはこれで「違う」という感じが満々なのです。
正直、これ、微妙じゃないですか?
どうして、こう長いシガレットの歴史の中で「遅摘み」というキーワードが目立たなかったのかが何となく分かった気がしました。
あと、気になるのは、これ、どこがレシピ開発したのか、とっても気になります。JTなのか、それともアメリカンスピリットサイドなのか。目立って悪いわけでもないのですけれどね。ここ最近で、ここまで雑味を意識してしまいやすい煙草というのも無かったものですから。
あまり通じ合える話ではないと思いますが、パッケージの色味が似ているということもあり、私は何となくニューヨーク・ニューヨークという煙草を喫した時の気分を思い出してしまいました。
ただ、あっちの方は「雑で何が悪い!」といった開き直った感じが痛快な印象だったので、この煙草の方が質(性格)が悪いかも知れません。
しかも、ニューヨーク・ニューヨークは格安ブランドでしたし。アメリカンスピリットは高額ブランドですから。
何というのか、コンセプトは絶対的に価値があるので、急ぎで出てしまったのなら、ひとまず差し戻した方が良いような気がする煙草なのでした。
Nutrition Facts
Serving Size: 1 Cigarette
Tar10mg Nicotine1.5mg
Don't smoke until you are 20 years old.lol
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